西野 寛
氏名(日本語):西野 寛
(ローマ字):HIROSHI Nishino
脚本家・サイエンスライター・物書き 大阪在住
2018年 2月 東北芸術工科大学 卒業論文にて瀬島賞 受賞
3月 東北芸術工科大学 芸術学部 美術科 総合美術コース 卒業
2021年 3月 株式会社水谷事務所/NPO法人 MERRY PROJECT
メリー関西支局長 就任
2022年 10月 川越蔵と現代美術展にて執筆・翻訳
2025年 6月 大阪関西万博で執筆・翻訳・通訳
プロフィール
ただ話を合わせるだけで、コミュニケーションは取れる。ただ知識を覚えたり、猿真似するだけで仕事はできる。
別にそれは「わたし」じゃなくても取替可能な事だ。
では「わたし」とはいったい何なのか?
そんな空っぽな感情の答えを求めて、藝術論を専攻。
大学では「東洋哲学」と「東洋心理学」を基に「美術教育」を行うというコンセプトで、画家の岡田真宏 教授から指南を受け。 宮沢賢治を研究し、「より繊細に文章の中にある人間の心」を読み解く業(わざ)や「人の心が動く"藝術"とは何か」といった事を学んだ。
以下作品
『とある風景』
傘の雨粒がズボンにパラパラと落ちる。
「はぁ。」
おまけに汗が額から落ちそうになる。
メガネや本に落ちる前に、慌てて右手の甲で汗を拭った。
そのまま手の甲で眉毛から髪の際までおデコ全体をふく。
手の甲を観ると、びっしょりだ。
幸い電車の冷房除湿のお陰で、直ぐに乾きそうだ。
「まもなくJR淡路です。」
「・・・しまった、傘を畳まないと。」
窓の外では乗客が列をつくって、座るのを待っている。
椅子の手摺りにサッと傘を起き、網棚にカバンを置く。
幸い、ドアが空くのには間にあった。
「ふぅ。」
左側のボックスには女子高生が座った。「 一学期の期末試験終わりなのだろうか。 正午前に乗ってくる客ではないな。」
ぼうっとそんな事を感じた。
そして、びちゃびちゃのビニールの雨傘を持った、 全身ブランドで身を固めた真っ黒なコーディネートの男が私の前の 通路に立っていた。
見ると、傘を私に当てない為に難しそうに手を動かしている。
サッと膝を引いた。
「全身ブランドに包んでいるだけあって、気遣いができる。」
本を読み進めなければならなかったが、 またもそんな事を考えてしまった。
その間にテーブルに傘を掛け、右前の座席に座る。
男はこんな天気だというのに、黒い革の帽子を被って、 ジャケットを着ている。
こんな時間に綺麗な格好で何処に行くのだろうか。
どんな人物かが見たくてたまらなかったが、 帽子のせいで叶わなかったが、黒い顎髭だけが見えた。
電車が淀川に差し掛かり、車内が明るくなる。
明るくなってもやはり、目の前は黒いままだ。
ーーー
『違和感』
さっきから耳に関する違和感を感じる。
かきたくて、かきたくて、たまらない。
アトピーのせいか皮膚が爛れている。それも、 アトピーは年々酷くなる。
そして、かく毎に白い粉が耳から落ちる。
「鹿に舐めて貰いたいな。」
不思議にそんな事を思った。
最近、保護鹿に会えていないせいか、それとも、 唾液が肌にいい気がするのか。
それが考えに至った原因だろう。 何となく答え合わせをはじめた。
それが考えに至った原因だろう。
それでも、かきたくなる衝動。
そもそも悲しきかな、世の中、 原因が分かったからといって問題が解決する訳ではない。
歩いている中で、ふいに潮風が鼻に入る。
そして、一面に青と白だけの空間が拡がる。
「ああ。遠くに来てしまった。」
ふと、アトピーになる前の自分を考えてみる。
遠くに来ても、足跡を辿る事くらいはできるんだな。